Math.sqrt(7)


 桜が散る頃、雨が降っていた。らしい。 隣人は昨日何か叫んで消えていった。らしい。
 ……まあ、これはよくある話だ。だけど、

    √7が降ってくることなんて、滅多にないよ。

 正直困る。文字だからこそ表せるけど、視覚情報ではどうしようもないし、どうしようもない。だけど、降ってきちゃったからにはどうにかしないといけない。なぜ。ほかに誰もいないから。
 本を買って読んだ。無人の本屋は今日も寂しい。そしてさっぱりわからない。可視化するためにとりあえず√7を自然数にしようと思ったけど、この本やっぱり難しい。数学苦手なんだよ、もうっ。なんとか自然数にさえできれば、何とかなりそうな気がするんだけど、難しいから無理。

    みゅー。

 猫が鳴いている。ああ、そうだ。

    ≪自分にできないことは誰かに任せろ≫、か。

 はい、どうぞ。猫さん。
 猫さんは√7を猫背に乗せて、ゆっくりと歩いていった。

 √7が降ってきた空間は、いまではもう何もないただの空間だった。そして、何もないただの空間が、それもそれでそれはそれはすばらしい空間なのかな?






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